【専門コラム】ダイヤモンド財務®の着眼点 銀行対策・銀行融資
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強い財務を築くために必要な判断軸
第121話:強い財務を築くために必要な判断軸
「舘野先生、先日付き合いのある不動産屋から『近くにいい売り物件が出たので買いませんか?』と持ち掛けられました。この話を銀行にしたら、とてもいい条件での融資を提案してきたので、父は購入したらどうかと言っているのですが・・・。」社長に就任して数年経過された、とある東北地方の二代目社長さんからのご相談です。
銀行の四半期決算のタイミングである3月、6月、9月、12月は融資が出やすいということもあって、融資を利用した不動産取引が活発になる時期です。そんなこともあって、かねてから「物件を売りたい」あるいは「物件を買いたい」と考えている人にとっては、まさに千載一遇のチャンス到来・・・といったところでしょうか。
真に事業に必要なもので、物件を購入することが将来の収益に直結することが確実なものであれば、購入の決断を下すということも、社長にとっては必要な経営判断です。ただし、あくまでも物件購入前と物件購入後の財務の状況がどのように変化するのかを社長自身が数字で明確に把握し、その上で「入念な下準備をした上で」の話です。
不動産を購入すれば、どんな会社であっても貸借対照表は肥大化します。不動産に限らず、資産が増えれば増えるほど、貸借対照表は大きくなって資金効率は低下していきます。
逆に、不動産を売却すれば、貸借対照表は圧縮されます。さらにいえば、売却によって得た資金をもとに借入金を返済すれば、各種財務指標も改善されていくはずです。
財務の視点で考えれば、この「違い」どれだけのインパクトを持っているのか・・・、その意味と価値を社長自身が本当の意味で知っているかどうかで、5年後10年後の未来が大きく変わってきます。
例えば、収益に直接貢献しないような「自社ビル」や「工場・倉庫」などを土地から購入して建設するのであれば、自社の貸借対照表が肥大化するだけでなく、資金繰りにも大きな影響を与えます。
特に土地は減価償却することができませんから、金融機関から借入をして購入するのであれば、その返済原資の捻出や返済スケジュールを慎重に検討しなければなりません。
ここで社長が絶対に知っておかなければならないのは、「貸借対照表対照表を肥大化させるということは、当然抱えるリスクも増えていく」という事実です。社長が個人的に資産を持つというのであれば話は別ですが、事業として会社経営をしている以上は、そのリスクを十分に承知した上で、決断を下さなければなりません。
ところが、実際のところはイザとなると、「銀行が安い金利で貸してくれるっていうから」「どうしてもこの物件が欲しい」という気持ちが先行して、経営者として最も重要な検討事項をあいまいにしたまま話を進めてしまうのです。
自社ビルや工場・倉庫などの建設そのものが悪いというわけではありません。ここで重要なことは、会社経営とは、突き詰めていくと最終的には「少ない元手で、お金を増やすこと」という原理原則を社長自身が本当の意味で理解しているか?ということです。
お金を増やして投資をし、その上でお金をしっかり残していく・・・という善循環を回していかない限り事業存続は不可能です。そして、その善循環を回すためには、財務中心の会社づくりが不可欠です。
もっといえば、いうまでもなく中小企業、特に同族会社は、大企業と違って経営資源も限られています。だからこそ、経営効率を上げていくことで利益を出し、お金を残していかなければなりません。そして、まぎれもなくこの「お金」も、大事な経営資源のひとつであるということを社長は絶対に忘れてはならないのです。
「見栄えのする高級外車に買い替えたい・・・」
「名門クラブのゴルフ会員権を買いたい・・・」
「クルーザーや別荘を買って遊びたいな・・・」
貴重な限りある経営資源であるお金を、自社の将来の収益に貢献しないようなものに使ってしまったのでは、自分で自分の首を絞めているようなものです。そして、何より、このような経営を下す社長のことを、従業員は厳しく、そして、冷ややかな目で見ているものです。
会社には、「持っていい資産」と「持ってはいけない資産」があります。社長がお金を使う経営判断を下す時は、将来の収益に貢献する「投資」であるべきですし、保有する資産はあくまでも「収益に貢献するもの」に限定すべきなのです。そして、そのための正しい経営判断の軸を財務の視点から持っている社長だけが強く永く勝ち残ることができるのです。
あなたは、財務を強化する経営判断を下すための思考軸を持っていますか?
財務中心の会社づくりで、5年後10年後も勝ち残る準備ができていますか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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社長と会社にお金が残る仕組みづくりの専門家
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