強い貸借対照表をつくる後継社長の考え方

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第111話:強い貸借対照表をつくる後継社長の考え方

「舘野先生、ウチの会社の貸借対照表は、一見すると、随分たくさんの資産があるように見えるんです。でも、個々の内容を確認していくと、実際のところは『よくわからないもの』が次から次へと出てきてしまって・・・。よくもまあ、こんなに長い間、誰も内容がわからないものが計上されていたなぁ~と驚きました。」数年後の社長就任を控えている、とある東北地方の二代目社長の一言です。

当社は、同族会社専門の財務コンサルティング機関ということもあって、社歴の長い会社の後継社長さん方からのご相談をお受けする機会が多いのですが、社歴の長い会社には、社歴の長い会社ならではの特徴だったり、お困りごとがあったりするものです。

特に、貸借対照表に関しては、よくよく調査をしていくと「不明な資産」や「実態の伴わない資産」が次から次へと出てくるもので、決して珍しい話ではありません。これは、どんなに小さな会社であっても必ず・・・と言い切ってしまってもいいぐらい、少なくとも1つは出てくるものです。

多くの社長にとって敬遠されがちな貸借対照表。しかし、後継社長こそ、まずは自社の貸借対照表を正しく理解し、その上で、一日も早く正しい経営判断を下すためのツールとして、貸借対照表を活用すべきなのです。

なぜなら、貸借対照表に比べて損益計算書は、多くの社長にとって、非常に関心が高いものであり、しかも、表示されている数値情報そのものも売上から費用を差し引いたものですから、日頃、決算書や財務などになじみのない社長であっても、なんとなくイメージがわきやすいという特徴があります。

しかし、損益計算書は、あくまでも一事業年度における儲けを示すものです。したがって、一過性のものでしかありません。次の期になったら、またリセットされて、ゼロから数値が積み上げられていくという特徴があります。

それに対して貸借対照表は、決算時点における資産と負債の状態を表したものになりますから、創業時から積み重ねてきた歴史そのものが数値情報としてあらわれてくるのです。

そうなってくると、先代社長自体に購入した資産だったり、場合によっては、その前の代の社長が購入した資産だったり・・・と、何十年も会社に「資産」として計上されているものが出てきたりするものです。それに、資産だけではなく、負債も同様に過去からの積み重ねで引き継がれていきますから、負債の中身についても精査が欠かせません。

したがって、先代社長から経営のバトンタッチを受けるというタイミングは、自社の貸借対照表を見つめ直す絶好のチャンスであるともいえます。しかし、ただ見つめ直すといっても、漠然と中身を見ればよいというわけではありません。

大切なことは、「その資産・負債は、自社にとって必要なものなのか?妥当なものなのか?」という判断基準をもつことです。

なぜなら、会社経営の本質は、突き詰めて考えていくと「最小の元手で、最大の利益を稼ぐ」という原理原則にあります。したがって、あくまでも事業として会社を経営している以上は、貸借対照表上に計上されているものは、収益に貢献するものであってしかるべきなのです。

ところが社歴の長い会社ほど、バブルの時代に購入した「事業に直接関連しないような資産」や、「そもそも使っていないような資産」などの負の遺産が、いまだに貸借対照表上に残っているものです。したがって、これから事業を承継する後継社長は、まずは、自社の貸借対照表がどのような状態になっているのかを正しく認識することからはじめるべきなのです。

少ない資産で、多くの利益が稼げる会社は、いうまでもなく経営効率が高く、経済環境の変化にも迅速に対応することができます。したがって、財務中心の会社づくりに成功している会社の社長は、できる限り資産を持たない「持たざる経営」を目指しているものです。

その一方で、収益に貢献する資産ならまだしも、収益に全く貢献しないような資産を一所懸命に買い集めているような会社もあります。社長個人に余剰資金があって趣味で買うぶんには個人の自由の問題ですが、会社で買えば当然貸借対照表上に「資産」として計上されます。そうなると、貸借対照表が肥大化して、ROAなどの財務指標も悪化します。

腕のいい金融機関の融資担当者やプロの職業会計人などは、決算書の情報から瞬間的に「どんな会社なのか?社長なのか?」をイメージします。その時に、収益に貢献しないような資産や社長の個人的な趣味と思われる資産が計上されていたり、内容のわからない勘定科目が並んでいたりする貸借対照表であれば、その会社と社長のことをどう考えるか・・・です。

財務を強化する上で貸借対照表は不可欠な要素ではありますが、それ以前に貸借対照表は、「会社の顔」「社長の顔」と表現されるぐらい、会社の方針や社長自身の価値観や考え方が数値情報として表れてしまう、ある意味怖いものでもあります。

したがって、社長はその点を正しく理解した上で、強く美しい貸借対照表に磨き上げる術(スベ)を身に着けることが重要なのです。

あなたは社長として、自社の貸借対照表を正しく理解できていますか?
 あなたの会社の貸借対照表は、誰に見せても恥ずかしくない内容のものですか?

ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛

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舘野 愛

この記事の監修・執筆者

舘野 愛(Tateno Ai)

ユメリアコンサルティング株式会社 代表取締役

同族会社専門 社長と会社にお金が残る仕組みづくりの専門家
100年続くキャッシュリッチ経営「ダイヤモンド財務®」開発者

法政大学経営学部卒業後、中央青山PwCコンサルティング株式会社、税理士法人みらいコンサルティングを経て現職。財務顧問部の責任者として数多くの同族会社の支援(経営財務・事業承継・企業再生など)に従事。ある同族会社の倒産を目の当たりにした経験から、「財務は会社と社長一族の命運を左右する」と痛感し、日本初の同族会社専門コンサルティング会社を設立。

20年以上にわたり1,300人以上の同族社長を指導。売上や借金を増やさずに1年で手元資金を2倍にした事例や、実質無借金経営の実現、相続税の9割圧縮など、あらゆる角度からお金の悩みを解決する「ダイヤモンド財務®」プログラムを開発・指導している。2017年・2020年には「日本の専門コンサルタント年鑑」で厳選実力者として紹介される。

■ 保有資格

  • 税理士(東京税理士会・登録番号109556号)
  • AFP(認定番号51535999)
  • プロコーチ(GCS認定コーチ・認定番号1406SJ0951)

■ 著書・執筆実績

  • 『社長と会社にお金が残る仕組みの作り方 ダイヤモンド財務戦略』(エベレスト出版)
  • 『同族会社のためのダイヤモンド財務3つのポイント』(日本コンサルティング推進機構)
  • 『企業再編・組織再編入門』(日本実業出版社・共著)

■ メディア掲載・出演実績

  • 日本経済新聞:書籍「ダイヤモンド財務戦略」掲載(2025年12月1日・2026年6月4日)
  • 日本歯科新聞(アポロニア21):特集インタビュー掲載(2025年9月)
  • 近代中小企業:3ヶ月連続連載「社長がお金の落とし穴にハマる理由」ほか(2019年)
  • その他:FM-FUJI、海外投資新聞、Webメディア「社長の履歴書」など多数

■ 講演実績

  • 主催セミナー:ダイヤモンド財務の実践法セミナー(70回以上開催)・「新春三大経営戦略」特別セミナー(2026年1月)
  • 商工会議所:岡山、千葉、宇都宮、新潟、富山黒部、群馬渋川、埼玉浦和など全国多数
  • その他:中小企業家同友会(町田、荒川)、株式会社識学他民間企業など多数