経理ができない社長が知っておきたい経理と財務の違い
「自分は経理ができない」「数字が苦手で、決算書を見てもよくわからない」と悩む社長は少なくありません。
しかし、社長が仕訳や帳簿作成などの経理実務をすべてできる必要はありません。経理担当者と同じ仕事をすることが、社長の役割ではないからです。
社長に必要なのは、会社に今いくら現金があり、いくら利益が必要で、半年後にいくら残るのかを把握し、未来の経営判断に使うことです。
この記事では、経理・会計・財務の違いと、経理が苦手な社長でも最低限確認したい5つの数字を解説します。
「舘野先生、会社のお金のことは経理と顧問税理士に任せっぱなしで、本当に何にもわかっていませんでした。自分はとんでもないカンチガイをしていたのです。」苦しい表情を浮かべながら、胸の内を教えてくださった、とある関東地方の2代目同族社長さんからのご相談です。
当社は、同族会社専門の財務コンサルティング機関(社長と会社にお金が残る仕組みづくり)なので、全国各地より同族会社の社長さんから会社経営にまつわるお金の悩みのご相談が寄せられます。
経理ができない社長でも問題ない理由
社長の役割は、日々の取引を記帳したり、会計ソフトへ入力したりすることではありません。こうした経理実務は、経理担当者や外部の専門家へ任せられます。
一方で、会社の数字を基に、いくら投資するか、いくら借りるか、どれだけ利益を残すかを決めるのは社長です。判断そのものを経理担当者や顧問税理士へ任せることはできません。
経理ができないことより、会社のお金の状況を確認せずに経営判断を続けることの方が大きな問題です。社長は経理作業の方法ではなく、経営判断に必要な数字の意味を理解する必要があります。
経理・会計・財務の違い
経理、会計、財務は、扱う時間軸と役割が異なります。次の表と図解で整理します。
| 区分 | 主な役割 | 時間軸 | 主な担当 |
|---|---|---|---|
| 経理 | 日々の取引を記録し、請求、支払い、入出金を管理する | 現在 | 経理担当者 |
| 会計 | 記録された数字を集計し、決算書や試算表にまとめる | 過去 | 経理担当者・税理士 |
| 財務 | 将来の資金、利益、借入、投資を計画して経営判断する | 未来 | 社長 |
「経理のことがわからないから、会社のお金のことがわからない…。」
「会計のことがわからないから、会社のお金のことがわからない…。」
「数字に弱いから、会社のお金のことがわからない…」
多くの社長がこういったことで悩み、苦しんでいらっしゃいます。そして、多くの社長が、会社のお金のことがわかるようになるためには、経理や会計のことを勉強して、数字に強くならなければならない…と誤解しています。しかし、それは、間違いです。
もちろん、「経理」や「会計」を知らないより知っていた方が良いに決まっています。「数字」に弱いよりは、強い方がいいに決まっています。しかしながら、だからといって、会社のお金のこと、つまり「財務」のことがわかるようになる…というわけではありません。
実際に、当社には、「経理出身」の社長さんもいれば、「経営コンサルタント出身」の社長さんもいます。さらには「銀行出身」の社長さんもいます。めっぽう数字に強い社長さんも、たくさんいらっしゃいます。その上で「財務が必要」と考え、当社にご来社くださっているわけです。
では、なぜ、そのような社長があえて「財務」を習得しようとしているのでしょうか。
経理が苦手な社長が最低限確認したい5つの数字
1.現預金残高
会社が現在保有している現金と預金の合計です。残高だけで安心せず、毎月の支払いに対して何か月分の資金があるかを確認します。
2.毎月の固定費
売上にかかわらず発生する人件費、家賃、リース料などです。毎月最低限いくらの現金が必要かを把握する基礎になります。
3.粗利益と粗利益率
売上から原価を差し引いた利益です。売上が増えていても粗利益率が下がれば、会社に必要な利益を確保できません。売上高だけでなく粗利益を確認します。
4.年間の借入金返済額
借入金の元本返済は損益計算書の経費になりません。利益が出ていても返済額が大きければ現金は減るため、年間返済額と必要利益を合わせて確認します。
5.6か月後の現預金残高
現在の残高だけでなく、今の経営を続けた場合に6か月後の現金がいくらになるかを確認します。資金繰り表を使い、入金、支払い、税金、返済を反映します。
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経理や税理士へ任せきりにしてはいけない理由
それは、本当の意味で「財務」を知っている社長ほど、「経理と財務は全くの別物」「数字に強いのと財務はまったくの別物」という事実を理解しているからなのです。
そもそもの大前提として、経理は、「既に起きたお金の管理をすること」つまり、過去の会社のお金の流れに沿って、日々の取引の記録をしたり、決算書をつくったりすることにあります。
それに対して、財務は、「これから動かすお金の管理をすること」にあります。つまり、会社と社長の未来に向かって、財産管理の実務、つまり、お金が残る仕組みづくりをすることにあります。
例えば、儲けを最大化するための損益管理の仕組みづくりをしたり、売上も借金も増やすことなくお金を増やすための打ち手を考えたり、お金を使わずにできる節税対策をしたり、金融機関と上手に付き合うための金融機関対応戦略を考えたりすることなどです。
ここで社長が絶対的に知っておかなければならないことがあります。それは、何かというと、経理や会計は、仕事の目線が「過去」にあるのに対して、財務は、あくまでも仕事の目線が「未来」にあるという事実です。
この事実に気付かない限り、いつまで経っても会社のお金のことはわからないままです。当然、社長と会社にお金が残ることはありません。
上場会社などの大企業であれば、CFO(財務担当役員)を雇って財務機能を持つことができます。しかし、中小企業、特に同族会社の場合は、社長が「財務」の重要性に気付かない限り、「財務不在経営」から脱却することはできないのです。
同族会社の社長ほど財務を知っておくべき理由
それから、同族会社の場合は、ある種「社長一族」と「会社」が表裏一体になっている部分があります。たとえば、事業用の不動産や株式を「社長一族」が保有していたり、「社長一族」や関連会社間で資金を回していたりしますので、非常にデリケートな問題もはらんでいます。
だからこそ、同族会社の場合は、社長が「財務」を知り磨き上げる努力をしなければならないのです。
それから、よく「財務を習得するためには、経理や会計の知識がないといけないのでは…」「財務を学ぶためには、決算書が読めないとダメなのでは…」という質問を受けることがあります。しかし、これらの答えは、全て「NO」です。
なぜなら、「財務」はあくまでも「未来に向かって社長と会社にお金を残す」ための「思考の原理原則」、つまり、「財務思考」を身につけることにあるからです。
誤解を恐れずに言えば、中途半端に経理や会計の知識があったり、自分は数字に強いという自負があったりする場合よりも、ゼロベースでスタートした方が過去や固定概念にとらわれないため、財務思考が浸透しやすかったりするものなのです。
財務思考を身につけるにあたって必要な要素は、経理や会計の知識ではありません。財務思考に必要なのはたった一つ、「社長自らが本気で自分の会社の未来に向き合う覚悟」だけです。
逆を返せば、いつまで経っても自社の経営に向き合わず、経理社員や税理士に責任転嫁をしている会社は、日を追うごとに経営が苦しくなっていきます。
ダイヤモンド財務の社長は、会社の未来を切り拓くために財務を重視します。キャッシュリッチ・高収益体質を早い段階で実現して、ゆとりのある経営を実践します。
ガラス財務の社長は、財務は経理や税理士の仕事と考えます。いつまで経っても財務不在経営のままで、気付いた時には、借入依存・資金不足・赤字体質から抜け出せません。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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