事業承継の成功確率を高めるために考えるべきこと
「舘野先生、そろそろ息子に会社を継がせなければと思ってはいるのですが、なかなか踏み出せずにいます。日々の仕事に追われて、気づけば何年も先延ばしにしてしまいました。このままではいけないと、頭ではわかっているのですが…。」とある関西地方の社長さんからのご相談です。
当社は、同族会社専門の財務コンサルティング機関(社長と会社にお金が残る仕組みづくり)なので、全国各地より、同族会社の社長さんから会社経営にまつわるお金の悩みのご相談が寄せられます。
この記事では、なぜ多くの社長が事業承継で失敗してしまうのか、そして、どうしたら成功の確度を高めることができるのかについて、具体的に解説します。
なぜ多くの会社が事業承継で失敗するのか?
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事業承継を先延ばしにしてしまう社長さんには、いくつかの共通点があります。その一つが、「まだ自分でやれる」「後継者に任せるにはまだ早い」という考えです。
「まだ自分でやれる」という気持ちが先に立つ
長年、会社を引っ張ってきた社長さんであれば、
「自分が現場に出たほうが早い」
「まだ後継者には任せられない」
「自分がいないと会社が回らない」
そう感じる場面も多いでしょう。実際、社長さんご自身が元気で、第一線で活躍されているのであれば、なおさらです。
ただ、ここで大切なのは、「自分がまだ経営できるか」という視点だけで、事業承継の時期を判断しないことです。
なぜなら、事業承継の準備は、社長が経営できなくなってからでは遅いからです。むしろ、社長が元気で、判断力、実行力もあり、後継者を支える余力があるうちだからこそ、事業承継の準備ができます。
- 後継者に仕事を任せる。
- 部分的に経営判断を任せる。
- 失敗したときには一緒に原因を考える。
- 銀行との良好な関係を次世代へ引き継ぐ。
- 財務の視点から経営戦略を考える。
そうした時間を十分に確保することも、事業承継の大切な準備なのです。
日々の忙しさで、事業承継の準備が後回しになる
もう一つ多いのが「大切だとはわかっているけれど、急ぎではない」という状態です。
資金繰り、社員の問題、取引先への対応、設備投資、銀行との交渉…。社長さんには、今日決めなければならないことが次々とやってきます。
一方で、事業承継はすぐにやらなくても、会社は動きます。そのため、
「来年から考えよう」
「もう少し落ち着いてから」
「後継者がもう少し成長してから」
と、後回しになりやすいのです。
ところが、事業承継で最も取り戻しにくいものがあります。それが「時間」です。
お金は後から稼ぐことができるかもしれません。しかし、後継者を育てるために必要だった時間は、後になって増やすことはできません。
だからこそ、事業承継は「いつか考えること」ではなく、「今から準備すること」なのです。
事業承継の失敗が倒産の引き金になる現実
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事業承継を先延ばしにすることで影響を受けるのは、先代社長だけではありません。後継者、社員、取引先、そして社長一族にも関わってきます。
突然の事態で、準備なき承継を迫られる
社長さんが元気なうちは「まだ大丈夫」と思ってしまいがちです。しかし、人生はいつ何が起こるかわかりません。
万が一、社長が突然、経営の第一線を離れなければならなくなったとき、十分な準備ができていなければ、後継者は突然、経営の責任を背負うことになります。
しかも、後継社長が引き継ぐのは、社長という肩書きだけではありません。会社の資産も引き継ぎます。負債も引き継ぎます。社員や取引先との関係も引き継ぎます。
そして、会社がそれまで抱えてきた経営上の課題も引き継ぐことになります。だからこそ、事業承継は「誰を次の社長にするか」だけを決めれば終わりではないのです。
「どのような状態の会社を渡すのか」
ここまで考えて初めて、本当の意味での事業承継の準備が始まります。
先延ばしした時間は、後継者から奪った時間でもある
事業承継について考えるとき、ぜひ社長さんに持っていただきたい視点があります。それは「自分が社長を続ける時間」だけではなく「後継者が社長になる準備をする時間」も考えることです。
後継者が経営者として育つには、時間がかかります。
- 数字を見て経営判断する。
- 社員と向き合う。
- 銀行と交渉する。
- 経営計画をつくる。
- 自分で決断し、その結果を引き受ける。
こうした経験は、一朝一夕で身につくものではありません。
先代社長が事業承継を先延ばしにすれば、その分、後継者が準備に使える貴重な時間も失われていきます。ここは、事業承継を考えるうえで、とても重要なポイントです。
当社が後継社長の支援に力を注いでいるのにも、理由があります。後継社長は、創業社長とは違い、ゼロから自分の会社をつくるわけではありません。最初から多くの資産と負債、社員や取引先を背負っての船出になります。
先代が築いてきたものを守りながら、自分の時代の会社へと進化させていかなければなりません。
だからこそ当社は、財務を軸にした経営の仕組みづくりを、次の時代を担う社長にこそ届けたいと考えています。
後継者が安心して経営に向き合える土台をつくっておくこと。それもまた、先代社長から後継者への大切なバトンの一つなのです。
事業承継は“財務戦略”が解決する
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では、事業承継はいつから始めればいいのでしょうか。当社では、「まだ早いのではないか」と思えるくらいの時期から準備を始めることが大切だと考えています。
事業承継は「早すぎるくらい」で準備を始める
ここで誤解していただきたくないのは、早く事業承継の準備を始めることと、早く引退することは、同じではないということです。
むしろ、早く準備を始めるからこそ、先代社長と後継者が一緒に経営できる時間を長く確保できます。
先代社長が元気なうちに、
「なぜ、この取引先を大切にしているのか」
「なぜ、この銀行と長く付き合っているのか」
「会社として何を守り、何を変えていくべきなのか」
そうした数字には表れにくい経営の考え方も、時間をかけて伝えることができます。そして少しずつ、後継者に判断を任せていく。
失敗しても、先代社長が隣にいるうちなら、一緒に立て直すことができます。これこそが、早く準備を始める大きな意味なのです。
財務を整えることが、事業承継の第一歩
そして、もう一つ大切なのが「財務」です。後継者に会社を引き継ぐのであれば、「会社を残す」だけでは十分ではありません。
事業承継で失敗しないために、財産より先に財務を整えるべき理由
「経営しやすい財務状態に整えて渡す」という視点も必要です。
- 会社に必要な現預金は確保できているか。
- 借入金は適切な状態になっているか。
- 連帯保証人や、不動産担保などは外れているか。
- 利益を出し、お金を残していく仕組みができているか。
- 社長が数字を見ながら、未来の経営判断をできる状態になっているか。
こうした財務の土台を整えておけば、後継者は目の前の資金繰りだけに追われるのではなく、会社の未来に向けた経営判断に力を注ぎやすくなります。
ダイヤモンド財務の社長は、事業承継を「社長を交代する手続き」だけではなく、「次の世代が経営しやすい会社をつくること」として考えます。だからこそ、まだ元気なうちから後継者を育て、財務を整え、時間をかけて経営のバトンを渡していきます。
ガラス財務の社長は、「まだ自分でやれる」「まだ先でいい」と、準備を先延ばしにし続けます。その結果、突然の事態で準備が整わないまま承継を迫られたり、後継者が十分に経験を積む時間を確保できなかったりする可能性があります。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
この記事の執筆者:舘野 愛(同族会社専門 ダイヤモンド財務®コンサルタント)
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